自閉症の二次障害を防ぐには? 子どもの強い心を育てる2ステップ

今川ホルン

自閉症の子を育てる中で心配なのが、うつや心身の不調などの二次障害。二次障害を予防するために、親が子にできることはなんでしょうか。

発達科学コミュニケーションマスタートレーナー、そして自閉症児の母でもある今川ホルンさんのアドバイスを、著書より抜粋してご紹介します。

※本記事は、今川ホルン著『脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育』(パステル出版)より、一部を抜粋編集したものです。

誤った周囲の対応が引き起こす自閉症の二次障害

自閉症の子に、しつけや否定の声かけは要注意です。

自閉症の特性があるがゆえに、迷惑がられたり怒られたりして、二次的に別の障害や他の問題を引き起こすことを「二次障害」と呼びます。

二次障害は、自閉症の特性に対して理解のない周囲の誤った対応によって起こります。集中できずに席を離れたり、動作がゆっくりであることを「怠けるな!」「遅い!」「気合が足りない!」と叱咤激励され続けてしまうと、自閉症の子は「自分はできないんだ」と傷つきます。言われた意味が理解できない子であっても、その雰囲気でモヤモヤした気持ちが心に残るかもしれません。

空気が読めなかったり、ことばが独特であることで、からかいやいじめの対象になってしまうこともあります。自閉症の娘が「なんでしゃべれないの? こんなに小さい1年生、見たことない」と言われては走り去っていく場面に、私もたびたび遭遇しました。相手の子に悪気はないのですが、自閉症の特性は周囲から注目されやすいのです。自己肯定感が下がるだけでなく、挫折感を繰り返し味わうことで、うつを患ったり、登校しぶりをしたり、心身に不調が現れたり、暴力的になったりと、症状の出方はそれぞれです。

うつも暴力的な行動も、ある日突然起こるのではありません。親や周囲からの否定的な声かけが続くことで、「何か言われたら怒る」という脳のルートがしだいに太くなり、癇癪を起こしやすい子になってしまうのです。二次障害は「よくない方向に脳が発達してしまった結果」だと言えるでしょう。

自閉症の二次障害には、図のように、さまざまな症状が挙げられます。

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ある自閉症の子のお母さんが、「二次障害を起こさないようにすることだけは気をつけている」とおっしゃっていました。大げさな話ではありません。いかに二次障害を起こさないかという課題は、自閉症児の子育ての大きなポイントです。

自閉症の二次障害は予防できます

自閉症の二次障害を起こさないためには、予防が一番です。そのためには、自閉症の早期発見と正しい理解が不可欠です。

子どもが自閉症だとまだ気づいていない親は、「気合が足りない」「怠けている」と思ってしまい、「なぜ言うこと聞かないですぐ怒るの?」「どうして運動会にうちの子だけ出られないの?」と不安になって焦り出します。すると、「がんばれ!」「できるよ!」という励ましが、次第に「しっかりやりなさい!」「なんであなたはできないの?」と叱咤激励に変わっていきます。すると子どもは「頑張ってもできない」「自分はダメな子なんだ」と傷つき、落ち込んで動かなくなったり、「ギャー!」と奇声を上げるようになります。悪い状況がエスカレートすると、対応はますます難しくなっていきます。誤った対応を長引かせないために、二次障害は予防することがとにかく大事です。

二次障害の予防には2つのステップがあります。

ステップ 1:肯定的な声かけをする
周囲の大人ができたところに注目する肯定的な声かけを続けることで、子ども自身が自分のできたことに注目する習慣が身につくようになります。

ステップ 2:自己効力感を育てる
子どもが自分のできたことに注目する習慣が身につくと、「自分はきっと大丈夫!」という未来の自信=自己効力感が育ちます。

自己効力感が育っていれば、たとえ友だちに「バカ!」と言われても、「自分はバカでダメな存在なんだ……」とはなりません。「へえ、君はそう思うんだね! ぼくは自分のことをバカとは思わないよ」というふうに、人は人、自分は自分という考え方ができるので、過度に落ち込んだり、自暴自棄になることはないのです。

いまはどんなに格好良くても、頭が良くてスポーツができても、いじめの対象になる時代です。いじめやからかいに負けない心の強さは、親の毎日の声かけで育てることができます。

脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育

脳を育てれば会話力がみるみる伸びる! ことばが遅い自閉症児のおうち療育』(今川ホルン著,パステル出版)

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